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愛と勇気の軌道降下 / ガンダム新体験 -0087- グリーンダイバーズ

人は愚かだと説き、粛清が必要だという男に、彼は言い放つ

「俺は貴様ほど急ぎすぎもしなければ、人類にも絶望しちゃいない!」

「機動戦士ガンダム逆襲のシャア」の劇中で、彼、アムロ・レイにこう云わせたものは何か? そう思うとき、必ずこの物語を想い浮かべる。

『宇宙世紀0087年』
 軌道上を航行していた旅客船がエゥーゴとティターンズの戦闘に巻き込まれ遭難してしまう。航行能力を失い、地球へと落ちていく船に取り残された幼い姉弟。頼るべき大人はおらず、ただ戸惑うばかりの子供たちを導いたのは、先の戦闘で中破したモビルスーツに搭乗するエゥーゴのパイロットだった。彼の導きと助力により、姉弟は降下艇へと辿り着き、旅客船からの脱出を果たす。
 しかし、運命は二人に更なる試練を課す。



『軌道降下』
 降下艇の自動制御が機能しない。無常にそう告げる艇のナビゲーションシステムは手動での地球降下を乗員に促す。宇宙艇操縦のカリキュラムを受けていた弟。だが軌道降下の経験などあるわけも無く、操縦桿を握る手が震える。不安に怯える弟を励ます姉。気丈な性格ではあるが、死の恐怖に飲まれぬよう必死だった。そんな姉の励ましを受け、震えながらもナビゲーションに従い、大気圏へのアプローチを掛けるが… 失敗。その絶望の淵に立った弟を二度目のアプローチへと向かせたのは、やはり姉の励ましだった。
二度目のアプローチ。しかし、2度のアプローチが想定されていない緊急時脱出用の降下艇には僅かな噴射剤しか残されていない。アプローチに成功しても、減速用の噴射剤が足りない。だが、望みはあった。気圏内での緊急用エアブレーキ。計算上はそれで地表への激突は免れる。姉弟は意を決し、二度目のアプローチを掛ける。陽の当たらない地球の影の中、降下艇はナビゲーションが示した通りの軌道を滑り、電離層を抜け成層圏へ。アプローチは成功した。あとはエアブレーキで最終減速を掛ければ…
だが、運命は最後まで姉弟に微笑まない。

『尊きものの前に』
 降下艇に残った係留アームの一部がエアブレーキのハッチに干渉して開かなかった。押し殺してきた恐怖に飲まれかけたそのとき、更なる衝撃が姉弟を襲う。夜空に溶けるような闇色の巨体が降下艇の真上に突如現れた。それはティターンズの気圏内用モビルアーマー「RMA-003 アッシマー」。戸惑う姉弟をよそに、アッシマーはリフティングボディ底部に内臓されたサーチライトで大気の中を滑り落ちていく降下艇を照らし出した。突然の状況に混乱する姉弟。
そのとき、
大地を覆う暗い雲を突き抜け、白い機影が現れる。その“飛行機”は長大なロケットブースターを切り離し、降下艇の後方から近づいてくる。それと同時に離れていくアッシマー。状況を理解できず呆然とする姉弟に、落ち着きのある男の声が通信に入る。彼は姉弟を救うために来たことを告げると同時に、減速していない降下艇の状況についての説明を求めた。それに的確に応える姉。彼女も弟同様、オペレーターとしての課程を修めていた。その説明で状況を把握した彼の操る飛行機が翻る。
次の瞬間
飛行機は巨大な人、モビルスーツへと姿を変えた。その白い機体は「MSZ-006-3 Zガンダム」。宇宙世紀0087年を代表する可変モビルスーツ。その3号機である。Zガンダムはビーム・サーベルを抜き放つと、背中から伸びる“尾”を跳ね上げると同時に全身の推進器から眩い噴射炎を放ち、降下艇へと迫る。
そして一閃
エアブレーキのハッチを塞いでいた係留アームが切り落とされる。次の瞬間、エアブレーキが開き、降下艇は減速を始める。その後、十分に減速し、Zガンダムに確保された降下艇は、飛行する輸送機の上で待つティターンズのモビルスーツ部隊へと託された。役目を終え、帰還するZガンダムとティターンズのモビルスーツが、まるで人間同士のように視線を交わす。それを見た姉弟は理解した。彼らは敵同士でありながら、その垣根を越えて協力し、自分たちを救ってくれたのだと。そして姉弟は再び会うことは適わないであろう事を悟り、Zガンダムのパイロットに伝える。ありがとう、と。彼はそれに短く答え、夜が明け始めた茜色の空へと去っていった。
宇宙世紀0087年。地球圏が更なる混乱を迎える少し前の小さな出来事だった。

ガンダム新体験 -0087- グリーンダイバーズ
 辛うじて覚えている内容をテキスト化しただけで目頭が熱くなってきた(涙。
子供のピンチに大人の面子や都合なんて構ってられっか! という、とてもやさしい出来事。荒んだ宇宙世紀世界には貴重なあったかい話だよ。こういう経験をしていたら、人は分かり合えるんだって、やさしくなれるんだって、信じてみようって思うよネ。まぁ、このZガンダム3号機のパイロットがアムロ・レイだとは何処にも書かれていないんですが…
あと、姉弟を助けた(最後のエアブレーキ事件は半ば彼の所為だが…)エゥーゴのパイロットが、「ガンダムライド」などに出てきた「ジャック・ベアード」だったり、美樹本デザインの姉が可愛かったりするのだけれど、詳細はウィキペ要参照ということで。

HCM-Pro23-01 ゼータガンダム3号機「グリーンダイバーズ」Ver.
創通・サンライズ / バンダイ

HCM-Pro20-01 アッシマー(グリーンダイバーズVer.)
創通・サンライズ / バンダイ

『U.C.軌道降下事情』
 ガンダムにはグリーンダイバーズ以外にも軌道降下を題材にした物語がいくつかある。が、面白いかと聞かれると返答に困る。

■ガンダムイボルブ13 (DVD「ガンダムイボルブA」に収録)
 「機動戦士Zガンダム」第11話「大気圏突入」、第12話「ジャブローの風」のジャブロー降下作戦に参加したティターンズのパイロットが主人公のお話。主人公の乗機がマラサイという地味さがウリ? 店頭放映(この頃のイボルブはPVとして店頭で流れていた)当時はHGUCマラサイの発売と連動していて、販促物としての側面もあったり無かったり。劇中では、主人公の父親が送ってきたビデオメールがバグって「死ぬぞ」を連呼するシーンが怖い。ただ、バリュートを開いて降下している最中って、そんなものを見ていられるくらい暇なのか? と問い詰めたい。まぁ、そんなことより。この主人公、話を聞いていると、どうもコロニー出身者っぽい。 …アレ? ティターンズってアースノイドじゃないとなれないんじゃ… イボルブ、こんな話ばかりw

■機動戦士ガンダム MS IGLOO -黙示録0079- 第1巻
 1年戦争末期。劣勢を強いられるジオン軍が、一発逆転の為に開発したトンデモ兵器群と、その運用実験に付き合わされる可哀相な人たちの物語。どんなに酷い内容でも、最後は美談のように締め括られるのがシリーズを通したセオリー。実質シリーズ第4話となるこの巻の副題は「ジャブロー上空に海原を見た」。南米の空には美食家がいる… 訳ではない。地球から引き上げてきたのはいいが使いどころのない水陸両用MSをどうにか使おうと捻り出した「モビルダイバーシステム」を用いたジャブロー上空への軌道強襲実験を描いた本編。タップリ30分あるため突っ込みどころがイボルブの比ではない。そのバカバカしさはSJPと並ぶ。とりあえず、作った人はをお父さんと一緒にグリーンダイバーズ見てくるといいと思う。イグルーもこんな話ばかりw

『銀鍵的軌道降下事情』
 なんで今、グリーンダイバーズで軌道降下? 相変わらず、此方の影響でございます。マブラヴが好きな子はもちろん、知らない子にもお勧め。カッコいいぞ!
by cor_leonis | 2008-07-14 17:36 | Feeling / Memorandum
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