<   2006年 07月 ( 3 )   > この月の画像一覧

反逆の弦が奏でる宇宙的恐怖 in JAPAN

『♪』
 近年の作家が書くクトゥルー神話からはスポッと抜け落ちているが「エーリッヒ・ツァンの音楽」に代表されるような音楽を題材にした神話作品がある。それがどうだと今の僕に論ずる事は出来ないが、本家米国をはじめ音楽を以て神話を語ろうとした者たちが居たことは識っている。きっと神話作品の中にある冒涜的かつ退廃的な叙述が彼らを惹きつけたのだろう。そんな奇行に走る連中が実は日本にもいた。「人間椅子」。江戸川乱歩の小説タイトルを冠したその連中は怪奇メタル、文芸ロックなどという可笑しな肩書きを与えられながらも高い演奏技術を有し、80年代後半~90年代に掛け活躍、現在も活動中らしいがその名を耳にする機会は余りに少ない…

黄金の夜明け
人間椅子 / トライエム

頽廃芸術展
人間椅子 / テイチクエンタテインメント

『鋼弦の調に乗って』
 人間椅子を初めて知ったのは確かマンガ「4年1組起立!」だったw。そう考えるとこの出会いは15年以上前に定められていたような気がしてくる。文芸ロックと呼ばれただけに文芸作品を題材にした曲がその大半を占める彼らだが、クトゥルー神話を題材としたものは2曲のみ。でも凄い。やったこと自体が。上の2枚に1曲ずつ、黄金の夜明けには「狂気山脈」、頽廃芸術展には「ダンウィッチの怪」がそれぞれ収録されている。聞いてみろとお勧めはできないが、神話が好きで興味があるなら一度聞いてみるのも良いかも知れない。
[PR]
by cor_leonis | 2006-07-17 07:32 | 今日の宇宙的恐怖

UNBALANCE

『新世紀ウルトラQ』
 「トワイライトゾーン」、「世にも奇妙な物語」などに代表されるオムニバス形式のミステリードラマ。1966年から放映された名作「ウルトラQ」もその一つである。そのウルトラQを新世紀に甦らせようと2004年に制作されたのが「ウルトラQ—dark fantasy」である!しかし、頑張って作った割りに、その内容は一部マニアの間でのみ良かった悪かったと論ぜられ、世間的にはまったく話題になることは無く終わった。斯く云う僕も放映当時は無関心で、自発的に放送を見ることは殆ど無かった。そんなある日、仕事でお付き合いのある方が「録画して毎週見ています」と仰るので思わず「いやーっ、僕も見たかったんですよネェ」と話を合わせた所、「では、DVDを焼いて送りますよ」なんて仰られる。翌週、それまで放映された話が纏まったDVDが本当に送られてきた。会社に。観ないで放置は不味いと、お礼と共に感想を伝えることを自らに課し視聴。内容はほぼ風評通りで映像のディテールが甘く、安っぽい合成が鼻に衝く箇所が多い。しかし、中には宇宙的恐怖を感じさせる良作もあり、想像していたより全然楽しめた。今となっては会う事もなくなってしまったが、DVDを焼いて送ってくださったS氏には大いに感謝している。

ウルトラQ—dark fantasy
武井 彩 相坂 きいろ 村井 さだゆき 梅津 裕一 長谷 敏司 上原 正三 太田 愛 岩佐 まもる / 角川書店
出版社コメント/憧れのマイホームを手に入れた主婦・加代子だったが、街のいたるところに書かれた“らくがき”に悩まされていた。消しても消しても翌日には再び現れる奇妙ならくがきは、いつしか加代子の家の中にまで現れて—「らくがき」。ほか、異星人との不思議な交流を描く「ウニトローダの恩返し」、失踪した人間たちの行き着く先は?—「楽園行き」、連続変死事件の鍵を握る黒頭巾の男の目的とは!?—「送り火」。あなたをアンバランスな世界へ導く4つの物語。大人気ドラマが完全ノベライズで登場!!

『円谷の宇宙から来る恐怖』
 あれから2年。古本屋で上の文庫を見つけ、何気なく購入。本の内容を確かめずに買ったのだが「らくがき」「楽園行き」というお気に入りの話が収録されており、得をした気分だ。そんな訳で気分がよいので、その2編についての雑文を認めておこう。(話の内容に抵触する箇所が含まれるので、これから本、もしくはドラマ本編を見ようと思われる方は… いないとは思うが、それらを見た後で読む事をお勧めする)

『らくがき』
 収録されている4編の中、最も怪奇色が強い話である。社会問題として度々ワイドショーなどで取り上げられる「落書き」と、最近耳にしなくなった「ミステリーサークル」を掛けた所が上手い。街の落書きが、実はミステリーサークル(円に拘っていないのでミステリーサインと呼ぶのが妥当か?)であった!と“日常と隣り合わせの怪奇”を巧みに描いている。特に話の落とし処はなかなかに魅せる。特に加代子が放った最後の言葉「あなたも、これから… がんばってくださいね」は、決して逃れられない“何か”が差し迫っているという戦慄と恐怖を視聴者、読者に齎してくれる素晴らしい演出であると共に、ここで感じる逃れられない、抗えないモノに抱く恐怖こそ宇宙的恐怖なのではないかと思う。

『楽園行き』
 この話、ドラマの売りは何といってもナレーションを担当する“怪奇俳優”佐野史郎氏がゲスト出演しているからに他ならないw。TBSドラマ「ずっとあなたが好きだった」でその存在を知って以来のファンである。氏の活動は俳優としては当然ながら、物を書いたり、バンドを組んだり、吸血鬼研究家だったり、ラブクラフティアンだったりと多岐にわたる。そんな氏が寄稿しているクトゥルー神話アンソロジー「秘神界 現代編」巻末の筆者紹介のなか、好きな神話作品の項にTRPG「クトゥルフの呼び声シリーズ」と書かれてあった。佐野史郎がd100を振る。そんな姿を想像した日から「いつかは氏とクトゥルフの呼び声をプレイしたい」と夢みるようになった。この夢を叶えてくれる銀の鍵が何処かに無いものか… と、話しているとこの話のウリが本当に佐野氏以外無いように聴こえてくるので物語についても何か触れておこう。この話、ドラマと小説では若干の違いがある。ドラマで楽園の人々を襲うのは、「鼠捕り」と呼ばれる放射線防護服のような物を着込んだヒューマノイド(人間かどうか分からないのでこう書いておく)と投光機を積んだ背の高い機械だが、小説では立方体が連なった殺人ロボットである。その描写はドラマでは人々が立ち向かっていく様を描いたのみだが、小説はスプラッターで描かれる。また、ドラマでは描かれなかった楽園のシカケ、所謂オチが小説では描かれている。コレについては正直「えーっ」と思ったが、落としどころとしては悪くない。まぁ、それについては読んで各々判断して下さいとしかいえない。
 ドラマの内容とは関係ないことだが、この回の撮影で使われた首都圏外郭放水路は先日完成し、実際に稼動しているが、まだ見学できるらしい。見学には予約が必要なのだが、これがまた中々取れない。汚泥で汚くなってしまう前に行っておきたいが、はてさていつになるか…
[PR]
by cor_leonis | 2006-07-17 06:43 | 今日の宇宙的恐怖

異色作に触れ

「不快、窮まる」
 随分と前に購入し、積んでいた本を読んだ。当然のようにクトゥルフ神話に連なる物語だったのだが、コレがまた“際物”のうえ“難物”。読み終わったときの不快さといったら、胸の辺りに決して拭え無い何かがこびり付いた様だった。

暗黒神ダゴン
フレッド チャペル 尾之上 浩司 / 東京創元社
出版社コメント/クトゥルー? ヨグ・ソトト? 意味不明の言葉が連なる古い手紙。屋根裏に鎖で固定された一対の手錠。片田舎の屋敷を相続した牧師リーランドを襲う悪夢と、妻への理由なき殺意。そして、魚類を思わせる異様な容貌の少女に出会ったとき、彼は魔界へと踏み込んでいく……。異端の詩人がラヴクラフトに捧げる、苦痛と狂気、恐怖と背徳の物語。

「不快の源」
 何がこんなにも不快感を胸に刷り込んでいくのか?延々と叙述される景観か?それとも、ただ堕落していく男の醜態からか?はたまた、タイトルや上のコメントからは想像だにしない物語がか?それだけではない。この本を読み終わったとき、正直、内容について全く理解できなかった。大概の本は、その中で著者が何を感じさせたいのか?漠然とでも分かる(と、思っている)。しかし、この『暗黒神ダゴン』では、巻末の解説とあとがきを読み、そこにある一つの解釈を得て初めて内容触れることができたという始末だった。そして、そこに至ったとき初めて著者の意図を識る。

 「私が何を書いているのか分かるかい?」

ええ、フレッド先生。全く分かりませんでしたとも。それでもバカなりに懸命に追いましたよ。結局チンプンカンプンでしたが。娯楽作品に慣れ親しんだ脳に、ロマン主義文学は理解できませんでした。そう、最も不快だった点、それは元より見当違いの作品を読んでいることに気付かず、不満を漏らしていた自らの無知さにだと思う。

「バカ、故に馬鹿」
 日頃から自分の無知は自覚しているつもりだったが、それ改めて突きつけられ不快に思ったと云うことは、まだ自覚し切れてないんだネ。こんなにバカなのにネ。 …あ、バカだからか!
[PR]
by cor_leonis | 2006-07-05 05:01 | 今日の宇宙的恐怖