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UC宇宙に潜む神話

 久しぶりにコズミックホラーです。しかも意外な所から。

『機動戦士ガンダム戦記—Lost War Chronicles』
 週末に機動戦士ガンダムを題材にしたTRPGで遊びました。そのため、先週はアタマからマブラヴを追い出すため、一生懸命ガンダムを詰め込みました。それこそ部屋中の資料をあさったり、物語を読んだり。この本もその1冊でした。

機動戦士ガンダム戦記—Lost War Chronicles〈1〉
林 譲治 富野 由悠季 矢立 肇 / 角川書店
−ジオン軍のマ・クベ司令が隠しもっていたと噂される、通称「M資金」。その秘密の軍資金をめぐって連邦軍とジオン軍の思惑がぶつかりあう! この夏発売、PS2用人気ガンダムゲームのオリジナル小説版、登場!
 ゲームはプレイしていたものの、この本が刊行された当時に読むことはなかったのですが、ふと興味が湧いたので、改めて読んでみました。話の大筋はまぁこんなモノかいった程度なのですが、MSパイロットの呼称についてや主計兵の話など、ガンダムの世界をより奥深く楽しませてくれる小ネタが非常に魅力的な物語でした。しかも、その小ネタの中には、とても意外なモノが潜んでいたのです。

『遺跡』
 連邦軍に属する主人公達デルタチームが南米ジャブロー付近の遺跡で警備任務に就いた時の話。主人公達は遺跡の警備というこの任務に疑問を憶え、遺跡の調査を始める。

デルタ・ゼロから送られてきたレリーフは、確かにインカ文明のモノにしては妙だった。どうも叙事詩を描いているらしいが、よほど旧いのか風化も激しく、欠落も多い。ただ素直に解釈すれば、蛸の化物のような何かが、大昔に闘って、敗北し、どこぞに幽閉されてしまった………ということらしい。おそらくはまだ考古学的に存在が確認されていないプレ・インカ時代の文明とその遺跡なのだろう」(本文より抜粋)

 更に遺跡の地下には広大な地下空間が広がっていることが分かり、デルタチームはジャブロー陥落の際に高官が逃げ込む為の避難所を此処に築くのではないだろうかと推察する。その時、ジオン軍のMS部隊が現れ交戦。それを撃破したデルタチームにはその遺跡よりの撤退命令が下る。結局、自分たちが何の為にその遺跡の警護に当てられたのか?あの遺跡が何だったのか?一切の説明はなく、デルタチームの面々は疑念を胸に次の任務へ就く。

『永劫の探求』
 まさかガンダムを読んでいてクトゥルー神話に至るとは思わなかった(汗。ここで語られる蛸の化物はまず間違いなく“大いなるクトゥルー”であり、幽閉された「どこぞ」とは“ルルイエ”でしょ。何故そう云えるのか?インカ及び、プレ・インカ文明の出土品には確かに、蛸のようなモノが描かれていることがあります。しかし、それらが闘って敗れ幽閉されたなどという話… と云うかインカ、プレ・インカ文明にそんな具体的な伝承などは現存していません(理由は聞かぬが花)。にも拘らずこの話。筆者の全くの作り話と云う可能性も否定できませんが、オーガスト・ダーレスの「永劫の探求シリーズ」において、ラバン・シュリュズベリィ博士が南米の奥地でクトゥルー復活を阻止する為、クトゥルー秘密教団の神殿をダイナマイトで吹っ飛ばしたのは有名な話。また、その時に南米の地底とルルイエが続いているとも言及されていました。それ以降、南米奥地にはクトゥルー信仰が根付いているという設定が生まれました(というか爺さんに云わせりゃ、有色人種はすべからくクトゥルーのようないかがわしい神様を信仰していることになっているらしい… ヒドイ)。で、抜粋を見返すと一致する符合がひしめいています。念のため、駄目押しすると、物語の筆者「林 譲治」氏が以前書いた「機動戦士ガンダム外伝 コロニーの落ちた地で…(上)」には、マサチューセッツ州インスマウスから来た『ディープ・ピープル』号という貨物船が登場していました
 ガンダムにクトゥルー神話を登場させる。自分では思いついても絶対にやらないだろうそれを、さらりとやってのけた筆者には正直恐れ入った。ただ、難易度高いぞw。
by cor_leonis | 2006-12-04 15:22 | 今日の宇宙的恐怖
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